「ロックンロールは敗者のゲーム」

greatest_hits

 なんてうたってるわけです、イアン・ハンターは。あのなんともいえない声で。彼はほんとロックにまつわる様々なシーンを魅力的な歌詞に仕立てる名人で、冒頭の文章はバンドの解散を決意した日のことを描いた曲(‘Ballad of Mott’)の一部だったりします。

 ロックンロールな日常、ワイルド・ライフっていうのか、そういうことを歌にする人は多いけど、彼のそれはリアルで切実。熱狂している自分とその熱狂を俯瞰する自分が同居しているせいで、彼にとって、ロックンロールがいかなる存在なのかがくっきりと伝わってきます。

 そしてその熱狂が過ぎ去って行こうとする様を美しく描き出しているのが‘Saturday Gigs’。これは解散間際に出したラストシングルで、MOTT THE HOOPLEの歴史をうたいこんでいるのですが僕はこれを聴くたび「バンドをやるってどんな感じなんだろう」という思いに駆られます。バンド幻想みたいなものがふくらんでしまう。そして好きなバンドのライブに通いつめてた日々を想うのです。

 ロックンロールは他とは違うということ、まっとうでないことを肯定してくれるありがたい存在なんですよね。まさに「敗者のゲーム」。僕だってかつてはしがみつくようにハードなギターを聴き、酔いしれていたわけで。いや、今だってロックは好きなんですよ。でももっと自分にとってそれが重要だった頃は確かにあって、彼らはそんな時代を決して嫌な感じでは無しに思い出させてくれるのです。

関連する投稿:

タグ: , , ,