Archive for 3月 29th, 2006

ごちゃついた風景が好きだ

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「私説東京繁昌記」を読み続けている。この本は写真家・荒木経惟との共著。彼の写真はなんというか「見てはいけないもの」を見せられている気分になってちょっとうろたえてしまうところがある。露になる、というか。ここに収められている写真は83・84年ごろに撮られたもので僕が知っている東京とはかなり違う。僕はこの十年後に上京するのだけど、ここに切り取られている原東京的なものはほぼ消滅していたと思う。

・・・そんなことはないか。神楽坂の路地の写真を見ていると僕が世紀の変わり目にしょっちゅう行っていた、下北沢を思い出す。ごちゃごちゃした街並。ライブハウスや小劇場。古本屋とレコード屋。手作りっぽい雑貨屋。若者で溢れる駅前から5分も歩くと普通の民家になってしまう雰囲気が僕はとても好きだった。まあ下北沢は小林信彦の基準では東京には入らないと思うけど。

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小林信彦のこと その3

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 会社帰りに久々に本屋に寄る。東京にいた頃は職場が神田の本屋街に近いせいもあってふらふらと寄って帰ったものだ。地方にいるとなかなか自分の欲しい本が見つからないとつくづく思う。amazonで買えばいいといえばそうなのだけど、やはり手にとってぱらぱらめくってみたいのだな。まあこれはCDにもいえることだけど。頭の中でそんなことを考えながら文庫のコーナーを見てたら小林信彦「私説東京繁昌記」を見つけた。僕はこれの姉妹編というか大分後に書かれた続編のような「私説東京放浪記」のほうは持ってて、愛読してたので、迷わず購入。僕はこの人の東京ものが好きなので、しばらくは楽しませてもらおうと思う。

 小林信彦は今の東京は嫌いで、昔の、というか自分の子供の頃の東京(戦前)を愛してることを繰り返し書いてるのだけど、そうして描かれたかつての東京はとても魅力的で、地方のいなか暮らしをしている僕には縁もゆかりもないはずなのに繰り返しよんでしまうのはどうしたことだろう?去年まで僕が十数年そこで働いていた東京…始終工事中のような、移り変わりが激しくて、まるで土着のすんでいる人がいないかのような…そういうのとは違った、生活の場としての東京の魅力とそれが失われていく様を描く小林信彦の文章は読んでいて心地いい。確かに彼にしてみれば今の東京は耐え難いのかも知れないけど、それでもなんにも起こらない地方よりははるかにましだと思ったりもする。そう思う人があつまったおかげでいまの得体の知れない東京ができてるんだろうなあ。

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