必要な音しか入っていないことの強さ

一年間

 そういうアレンジが好きなのです。出来うる限りシンプルに。ダイレクトに聴き手に突き刺されような音楽が聴きたい。華美になりすぎるのは興ざめだ、というわけで自分はストリングスが入っているアレンジが苦手だったりします。

 その多くがひたすら曲をゴージャスにしたかったり、クラシック・コンプレックスまみれだったりするからなんだけど、なかには素晴らしいものもあります。

 今日紹介するこのアルバムにもストリングスが入っています。それもかなり大々的にフューチャーされてるにもかかわらず、ちっともゴージャスじゃない。それどころかその豊かな弦の響きを聴けば聴くほど寂しさにかられるような、切ない音楽がここにはあるのです。

 控えめなアコギやピアノ、そしてスモーキィな声質のコリンのヴォーカル。今日のような寒い夜にこの音楽は似合います。プライベートで美しく、切ないサウンドはひとりで部屋にいることを否応にも意識させずにはいられません。

 しかしなぜかつらい感じにならない。それは独りでやっていくことを決意した元ゾンビーズのヴォーカリスト、コリン・ブランストーンのこのファーストに宿る寂しさが同時に凛とした力強さを含んでいるからかもしれません。

 彼は飾り立てることなど考えもしない。確信をもって自分の音楽をさらけ出している雰囲気はとても魅力的です。

 「こうして僕は再出発した。今度はひとりで。小説の書出しの一語と同様、いちばんむずかしい決断はなされた。」(コリン・ブランストーン)

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