ペット・サウンズ オリジナル・モノ・ミックス

 久しぶりにレンタルCD屋に寄ってみたらあの“Smile”があったので思わず借りてしまいました。そう、未完成で終わったにもかかわらずロックファンの間ではやたら有名で伝説度が高かった「あの」アルバムです。それを2004年になってブライアンが完成させたと知ったときは聴きたいような聴きたくないような複雑な気分でした。

 聴いてみた感想ですが、やっぱりいいです。66年の雰囲気もありつつ今のサウンドにもなっておりさすがだなあって感じで。少なくとも「こんなに待たせておいてこれかよ」的な不満はないです。でもBoxに収録されていたSmile Sessionの音源のほうがやっぱり好きかもかもしれません。やっぱりこの頃のブライアンは凄いです。‘Our Prayer’、‘Wonderful’、そして‘Suf’s Up’、やばいです、メロディといい澄み切った声といい・・・。とはいえこうして“Good Vibration Box”まで買ってしまったのは結局“Pet Sounds”にはまったからなんですけど。

 僕が“Pet Sounds”を初めて聴いたのは10代の終わり頃でしたが、その頃これがロック史上重要なアルバムらしいことは知っていました。なのに全然ロックな音じゃないということも。・・・なんだこれ?という体験を多くの人が持ったそうですが、僕はわりと最初から好きでした。こういうやば~い感じの美しさが元々好みだし、あとほら、「ロックじゃなければなんでもいい」っていいかたがあるんだけど(確かNew Waveのひとが言ってた、Wireだっけ?)そういう考え方が好きなのも抵抗がなく聴けた原因かもしれません。それに別にわからないってほど変な音楽でもないですし。メロディの素晴らしさは一聴でわかるものだし。

 だからこのアルバムについては最初から超好きって程でもなかったですけど、ある日突然分かったという瞬間もないんです。気づいた時には「やっぱりいいよね」という感じになってました。時々あの切ない感じが欲しくなって聴き返してたんですけど、そのたびにだんだん体の中に入ってきて、いつのまにか自分の中で特別なアルバムの1枚になってたんですよね。

 ところで話は戻りますが、Boxに入っているSmile Sessionは暗くて病んでて美しくて最高なのですが、実験してる部分もあるので、そういうところに耳がいくところが“Pet Sounds”とは違いますよね。あれはもうロックです。“Pet Sounds”はブライアンの個人的なアルバムだし、音的に斬新な試みをしているけど、まだ、(風変わりな)ポップス、ロックンロールなのでないかと思ったり。もちろん後付けでこれもまたロックなんだ、ということも出来るだろうし、そういう物言いも好きですけど。

 こんな風に考えるのも国内盤についてる山下達郎の超詳しい解説の影響なんですけどね。Pet SoundsからSmileに至るブライアンの物語に興味がいったのもあの解説を繰り返し読んだからだし。“Rubber Soul”から“Pet Sounds”が生まれ、その影響で“Sgt Peppers”が生まれたが、“Smile”は完成しなかったという物語・・・ドラマチックですよねえ。その結果初期The Beach Boysはベストでさくっと済ませてるくせに、“Smile”収録予定曲が入ってる後期のアルバムは結構もっててあげくBoxまで買ってしまいました。

 とまあいろいろ書いてますが、こういう歴史的名盤について書くのって難しいですね。あまりにいろいろ書かれすぎてるし、こっちもいろいろ読んでしまってるからどこまでが誰かの意見でどこからが自分の意見なのかわかんなくなってしまいます。1ついえることは一度気に入ってしまうと聴かなくなるのが難しくなる音楽だなあということ。作り手の心情が音に凄くリアルに出ちゃってるからそこと聴き手の心情のどこかが触れ合うと離れられなくなるんじゃないかなあと思うんですよね。

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