いつも懐かしく、いつまでも新しい音楽

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 聴いていると、すっごく楽しい、でもなんか少し寂しい不思議な気持ちになる作品集。日曜日の夕方感といえばいいのか。曲調はバラエティに富んでいるし、アレンジも多彩、そしてうたと演奏を無心に楽しんでいる雰囲気が素晴らしく何度聴いても飽きません。

 これを初めて聴いたのはCDショップの視聴機だったのですが、いいなあと思いつつ、ぼんやり思ったのは「サウダージ」というのはこういう感じなのかなあ、ということでした。通常、「郷愁」と訳されてて、ブラジル音楽のキーワードみたいなものなのですが、それをリアルに感じられた気がしたのです。

 50年代末、ナラ・レオンのアパートメントには若い音楽好きがたくさん集まっていたそうです。そこで演奏されたのが後にボサノヴァといわれるようになった音楽だったというのはよく語られる話で、そのとき出入りしていた仲間たちやその後ナラが出会ったミュージシャンとのコラボレーションで出来上がったのが本作なのです。

 要するに同窓会的なアルバムなのですね。懐かしさと、切なさとが感じられるのも当然なのかも知れません。発表は77年。共演者の多くは当時すでに大御所でした。しかし、そんな雰囲気は微塵も感じられない瑞々しさはどうでしょう。確かにこのアルバムでは若き日々を懐かしんでいる彼らは、引退したわけではなく進歩し続けるミュージシャンでもあるのでした。

 かつて新しい何かを作り、今なお作ろうとする人たちによって作られていることがこの作品集をより輝かせているのではないかと思うのです。この作品を聴くときはいつも、自分の自信作を持ち込んで、どーだ、って感じで聴かせて、ナラの顔をのぞきこんだりする光景を勝手に想像したりして楽しんでます。

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