小林信彦のこと その3
書籍・雑誌 3月 29th. 2006, 1:19am会社帰りに久々に本屋に寄る。東京にいた頃は職場が神田の本屋街に近いせいもあってふらふらと寄って帰ったものだ。地方にいるとなかなか自分の欲しい本が見つからないとつくづく思う。amazonで買えばいいといえばそうなのだけど、やはり手にとってぱらぱらめくってみたいのだな。まあこれはCDにもいえることだけど。頭の中でそんなことを考えながら文庫のコーナーを見てたら小林信彦「私説東京繁昌記」を見つけた。僕はこれの姉妹編というか大分後に書かれた続編のような「私説東京放浪記」のほうは持ってて、愛読してたので、迷わず購入。僕はこの人の東京ものが好きなので、しばらくは楽しませてもらおうと思う。
小林信彦は今の東京は嫌いで、昔の、というか自分の子供の頃の東京(戦前)を愛してることを繰り返し書いてるのだけど、そうして描かれたかつての東京はとても魅力的で、地方のいなか暮らしをしている僕には縁もゆかりもないはずなのに繰り返しよんでしまうのはどうしたことだろう?去年まで僕が十数年そこで働いていた東京…始終工事中のような、移り変わりが激しくて、まるで土着のすんでいる人がいないかのような…そういうのとは違った、生活の場としての東京の魅力とそれが失われていく様を描く小林信彦の文章は読んでいて心地いい。確かに彼にしてみれば今の東京は耐え難いのかも知れないけど、それでもなんにも起こらない地方よりははるかにましだと思ったりもする。そう思う人があつまったおかげでいまの得体の知れない東京ができてるんだろうなあ。
関連する投稿:
タグ: 作家
4月 3rd, 2006 at 11:40 AM
エッセイというかコラム本を何冊か持ってますが、氏の視線に感服しつつ読んでいます。
特に美空ひばりについて書かれてるところとか、歴史の表層に浮かんでくるところしか認識していない人にとっては(特に後追い世代はそうでしょう)、目から鱗が落ちると言うか、大瀧詠一氏の分母分子論と同じく、戦前・戦後の音楽の成り立ちについての氏の話をもっと読んでみたいと思っています。
氏が強くシンパシーを抱いていたと思われる、色川武大氏の本と同様に大事にしたい本ですね。
4月 4th, 2006 at 1:21 AM
>k-hikoさん
この人は多方面に知識があるので、書いてることに奥行きがあるんですよね。ただ音楽については、映画・演劇に付随しての知識かも。音楽単独で書いた文章はあんまりないような気がします。でもたまにかくとこうだもの。すごいね。
>大瀧詠一氏の分母分子論
どちらもクレージーキャッツとか小林旭が好きなんでしたっけ。対談したりもしてますね。
小林信彦が色川武大について書いた文章は読んだことがありますが、色川武大の文章は読んだことがないです。機会があれば読んでみようと思います。