会社帰りに久々に本屋に寄る。東京にいた頃は職場が神田の本屋街に近いせいもあってふらふらと寄って帰ったものだ。地方にいるとなかなか自分の欲しい本が見つからないとつくづく思う。amazonで買えばいいといえばそうなのだけど、やはり手にとってぱらぱらめくってみたいのだな。まあこれはCDにもいえることだけど。頭の中でそんなことを考えながら文庫のコーナーを見てたら小林信彦「私説東京繁昌記」を見つけた。僕はこれの姉妹編というか大分後に書かれた続編のような「私説東京放浪記」のほうは持ってて、愛読してたので、迷わず購入。僕はこの人の東京ものが好きなので、しばらくは楽しませてもらおうと思う。

 小林信彦は今の東京は嫌いで、昔の、というか自分の子供の頃の東京(戦前)を愛してることを繰り返し書いてるのだけど、そうして描かれたかつての東京はとても魅力的で、地方のいなか暮らしをしている僕には縁もゆかりもないはずなのに繰り返しよんでしまうのはどうしたことだろう?去年まで僕が十数年そこで働いていた東京…始終工事中のような、移り変わりが激しくて、まるで土着のすんでいる人がいないかのような…そういうのとは違った、生活の場としての東京の魅力とそれが失われていく様を描く小林信彦の文章は読んでいて心地いい。確かに彼にしてみれば今の東京は耐え難いのかも知れないけど、それでもなんにも起こらない地方よりははるかにましだと思ったりもする。そう思う人があつまったおかげでいまの得体の知れない東京ができてるんだろうなあ。

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