彼の音楽をはじめて聴いたとき、思ったのは「これからは仕方がない、と思わずにすむな」ということだった。良質な音楽は沢山あるし、メロディだけが音楽の重要さだとも思わない。だから初めてビートルズの赤盤を聴いたときのほどの衝撃、あのメロディと歌声、無数にあるはっとする驚きを他の多くのミュージシャンから得られることがなくとも、それは仕方のないことなんだ、と長いこと音楽を聴いてるうちに納得しようと努力してきた。でも、これからは彼がいる。僕と同年代のElliott Smithがそれを満たしてくれるだろうと“XO”を初めて聴いたときに思った。

 聴けば聴くほどメロディもアレンジも素晴らしく毎日通勤中聴きまくった。それからライブにもいった。次に出た“Figure8”も聴いた。これも素晴らしかった・・・こうして彼の音楽は僕には欠かせないものになった。そしてこれからも僕の音楽生活とともにあるんだろうなあ、と思ってた矢先、2003年10月彼はこの世からいなくなってしまった。

 今は彼の死後購入した“Either/Or”を聴いている。“XO”の前のまだインディ時代に出たアルバムだ。いつもの切ない歌声と彼らしい飽きのこない楽曲が並んでるけど、その後のアルバムよりは素朴なアレンジの、シンプルな演奏が聴ける。ファンサイトに載っている歌詞なんかを読むと、彼自身は人知れず問題を抱えた人物のようだし、彼の演奏にはくっきりとした孤独の影があると思うけど、その背景などには深く踏み込みたくない。それよりは例えば‘say yes’のメロディを何度も聴いていたい。

 彼の紡ぎだすメロディは多くの場合、凡百の元気だけ、あるいは明るさだけを感じされるそれとはまったく違う。もちろん悲しみだけでみたされているわけでもない。日々の生活が単純に割り切れるものでないのと同じだ。ある出来事の受け止め方が人によって異なるように、彼のメロディを、歌声を聴いて、胸に迫ってくる想いは様々なんじゃないかと僕は思う。彼の音楽を聴き手は自分なりのやり方で受け止める。そしてなんども聴いているうちに彼の音楽は次第に僕の、あるいはわたしの音楽になっていく。

 やっぱり彼については上手くかけないな。ここをはじめた理由のひとつが彼について書くことだったのに。まだ到底彼の音楽について分かってないし、その魅力も説明できないし、とか思って先のばしにしてたんだよね。要は彼の音楽はいいよ!機会があったら聴いてみてよ。ってことなんだけど、それだけじゃあんまりだ、と思って書いてはみたもののなんだかよく分からない文章になってしまった。Elliott Smithの魅力が1ミリでもいいから伝わっているだろうか?

Either/Or

XO

Figure 8

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