嫌いになれるわけがない

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 実はフェルトってそんなに凄いバンドではないかも知れないと思うのです。ヴォーカルのローレンスの呟くような唄もディーバンクのギターも独特ではあるけれど、歴史に残るほどのものか、というとちょっと考え込んでしまう。

 このアルバムを選んだのは本作から後にプライマル・スクリームに入るマーティン・ダフィーがキーボードを弾いてるし、名曲‘primitive painters’が収録されているからなのだけど、これが決定版でははない。ていうかアルバムとして名盤の域に達してるのがあるのか疑問だったりして。どこか散漫というかなげやりな気がします。

 ・・・全然ほめてないなあ。でもそういうところも含めて好きなんです、フェルト。かなり思い入れがあります。僕がフェルトを知った頃にはとっくに解散してましたが、がんばってCD集めました。ルーリードをちょっと思わせるヴォーカルに美しいアルペジオがかぶさるのが初期フェルトの基本なんだけど、なんか完全には溶け合ってないんですよね。しかもこのアルバムではダフィーのキーボードが割り込んでいてさらにいびつになってるんだけど、全然それがマイナスになっていないのが不思議です。各メンバーの美意識の暴走というか、せめぎあいが(特に初期の)このバンドの魅力なのかも知れません。

 ほんと独りよがりな連中だと思うけど、いいんだよなあ。普遍的なよさとは程遠いのかも知れないけれど。「俺はこのバンドが好きだ」とひとり呟いていた日々を思い出します。たいていそういうアルバムは時を経ると聴けなくなるんだけど、これは別。純度100%の青臭いアルバムをこれからも思い出したように聴き返すことでしょう。

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