夜が似合う音楽

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 それまでR&B系ビートバンドThemで活躍していたVan Morrisonが初めて自分の音楽的自由を得て作られたこのアルバムには、セッションのために集められたジャズ畑のミュージシャンとはろくにリハーサルもせず録音にのぞんだというのが信じられないくらい、うたと演奏の息がぴったり合った素晴らしい演奏が収められています。

 ジャズの要素も、R&Bの要素もここにはあるのですが、出来上がった音楽はそのどれにもあてはまらないもので、本人は不満だそうですが、それはあえて名づけるならば“ロック”というしかない音楽だったわけです。

 Van Morrison、バック陣双方がジャズやブルースに深い素養があることは演奏していて、すぐにわかったのでしょう。ここには自信に裏付けられた自在さと、未知の音楽をやっているということからくる緊張感がいり混じっていて、独特の雰囲気を生んでいるように思います。

 演奏すべき音を見つける過程がそのまま音楽になっているといったらいいのか・・・しかもその過程がとんでもなく美しいというのがいいんですよね。熱気を孕みつつもどこか落ち着いた雰囲気はやはり夜に聴くのが似合います。このアルバムはほとんど一晩のセッションで出来たそうで、それが影響しているのでしょうか。

 こういうジャンル分けできないような音楽が好きですね。これがロックの名盤といわれていること自体が、60年代末の雰囲気をよく表していて面白いなあと思います。

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